まさかのコロナ
コロナになった。
38℃ばかりの発熱と倦怠感、咳と喉の痛みがあった。
外仕事で軽い熱中症になり、痙攣や手足の硬直があった翌日だったので
てっきり熱中症によるものかと。そうであってほしいと思ったのだが。
残念ながら、夕方、かかりつけ医での検査では、うっすらと2本目の線が浮かびあがってきた。
治療中の病気は?喫煙は?ワクチンの接種について問われたとき、2回目までしか受けていないと答えたら、メガネの奥の目が冷ややかになったのは気のせいか。
陽性宣告を受け、カロナールしか処方されないと知り、次第に危機感がつのってきた。
ケアマネさんにCメールを入れる。
(陽性になってしまいました)
(どなたが?)
(私が、です。)
ほどなく電話がある。
用件は義母のことである。
左半身が麻痺しており、介護4。在宅介護でみている。週2回のデイケアで、リハビリと入浴のサービスを受け、他の日はヘルパーさんが10時と15時にオムツ替えに来てくださる。朝夕のオムツ替えと食事は私の役割だ。
介護者がコロナ陽性となると、デイケアとヘルパーさんはストップだ。また、おそらくショートステイも難しいだろう。
ケアマネさんが、義母の主治医の市立病院のケースワーカーさんとも相談してくださったが、私が重篤な状態なら他にもあたるが、病床に余裕がないとのことだった。そして私は重篤でも重症化のリスクが高いわけでもない。
つまりだ。コロナ感染者である私が、自らの自宅療養期間10日間のあいだ、義母への「普段より濃厚な介護」を行うということだ。
えー。
仕方ない。
厚生センターからの電話での指導では、介護はマスク、手袋着用で会話は最低限でとのことだった。なんだよ。普段どおりですけど。
自宅療養初日は、38℃越えでへんなテンションのなか、感情が入るゆとりもなかった。
オムツ交換して眠り、オムツ交換して眠り。ご飯の支度して眠り。
2日目になると、せきがひどくなり、こらえながらのオムツ交換だ。仕事も無断で止めておけないと判断し、お客様にお詫びの連絡をいれる。オンライン参加できることは参加させて頂いたが、会食や視察をキャンセルした。無念。初日より実家から、差し入れが届く。それを配膳して食事とする。大変助かった。
3日目、デイケアで入浴できないので、清拭くらいはしなければと思い、お湯を沸かす。オムツ交換のあと、熱いタオルで義母の全身を拭う。背中から垢がポロポロ落ちる。途中で息苦しくて立っていられなくなる。もうやめておこう。新しいパジャマを着せて、使用したタオルを洗っているうちに、怒りがこみあげてくる。義母への感染は時間の問題ではないのか。座して死を待ててきな?
あ、でも、そもそも私が持ち込んだんだった。私の油断だ。
自業自得で自己責任ってことか。
手袋を捨て、マスクを捨て、布団に倒れこむ。
寝転んで手をのばしてiPad miniを見ると、お友達からLINEが入っている。
玄関に差し入れを届けてくださったとのことだ。
急に元気になり、階下に降りる。ずっしりと重い袋には、飲み物やゼリー、おばんさいなどがぎゅうぎゅうに詰められていた。
ちょっと涙目になる。一人じゃないんだ。
4日目、せきがしつこくなり、たびたび嘔吐するが、何も食べていないので胃液が口の中に満ちてさらに嘔吐する。義母はヘルパーさんのことも、デイケアのことも、聞いてこない。おそらく私が、話しかけないでオーラ全開だからであろう。午後に、ご近所さんからモスの差し入れをいただく。夕ご飯に、美味しく頂いた。(義母と夫が)日頃とはうってかわったバラエティに富んだ食事が続く。